世界は言葉から始まった。
数万年前、『神々』と呼ばれた人々は情報伝達の為に文字を開発する。
後に神代文字と伝えられたそれらは漢字のルーツともなった象形文字だという。
箱根には大文字焼きという祭りがあるのだが、これは実は巨人を表す象形文字という説がある。
かつてこの地には巨人族が住んでいた。
人間を襲うこともあったようだが、中には人々を助け村や街を造るために協力する巨人や、火の起こし方や戦の方法まで教えてくれる巨人もいたらしい。
巨人とは何だったのか? 文字を伝えた神々とは何者だったのか? 彼らは一体どこから来てどこへ行ってしまったのだろうか?
私はカウンターに並んだ納豆餃子と箱根餃子の皿を見比べながら考えた。
ここは職場の知り合いから教えて貰った場所で、彼が暴走族であった30年ほど前には営業していた老舗である。
私は……この手羽先餃子を見て思った。
太古に起きたポールシフト、それが温暖だった地球の環境を著しく変化させた。気温が下がり、氷で閉ざされ重力も変わった。
その結果多くの巨大な生き物たちが生き延びられずに淘汰され、グループの中で比較的小柄な連中は生き残った。
その中には人間と交配する者もいたことだろう。
人類は黒人から始まったというより色々な神々と交配して誕生したのではなかろうか? もしくは交配や融合が可能な種として神々から手を加えられたのが現世人類ではなかろうか?
巨人族も神々も私達の身体の細胞として、あるいは言霊や文字として生き残っている。