🎼神々の宿る世界樹 Ψ機神(おに)たちのユグドラシルΨ

東海方面を中心とした遺跡や小さい神社などを探訪するブログです。

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 バス停には“権現堂前”と書いてある。

 

 

 民家と民家の塀の間にある軽トラ1台分の小道を進むと富士山を正面から遥拝する小さな、それでいて開放感バツグンの神殿である。

 額には権現堂では無くて「権現宮」とあるが単なる間違いかも知れないし廃仏毀釈が関係しているのかも知れない。

 権現とは神社とお寺の区別が無かった時代の山岳信仰において人間を神様として祀った場所につけられたもので、ここには当然「○○権現」という固有名称が本来はあったのではあるまいか。

 ところがそれを表に出せない理由があった。

 富士山の火口には修験道的に重要な神社が2つある。

 富士山といえば「かぐや姫」の伝承がある。大昔、月の王国が世界を統治していた時代に美しいお姫様がいて木花開耶媛(ヒナ)という名前だったが、幼馴染のアメノコヤネという男性から紹介された王子ニニギと結婚して王妃となった。だが妊娠をすると王となったニニギから不倫疑惑をかけられて、それを苦に最後は富士山の火口へ身投げしたのち浅間大菩薩(カグヤ)として転生した。

 これが富士宮市側にある浅間神社奥宮のお話。

 もう一つは、御殿場市小山町側の久須志神社。祀られているのは薬師権現で、またの名を少名毘古那(スクナビコナ)という。

 彼は世界の海を股にかけたエビス人(フェニキア人)である。そして実は………小国神社の大物主命(大国主の別人格か?)でインド神話で言うところのシヴァ神のイメージのひとつなのではないかと言われたり言われて無かったりする。

 シヴァは前妻であるパールバティ(鬼子母神)が何らかの事情で火の中に投身(自●)して亡くなっており、それがもとで取り乱し山の中の磐戸(修行の洞窟)に引きこもってしまった神話がある。

 ある日、新しい后が前妻に縛られ引きこもりになっているシヴァの心を取り戻そうと、彼が通りかかるのを見計らってワニに襲われたウサギのオジサンを救出し、パールバティに負けないぐらい強くて心やさしい女性である事をアピールして見事シヴァと結婚しているが、実はワニもウサギもその女性の家臣であってぜんぶお芝居だったというオチがある。ここまでのエピソードは遠州式内社にそれぞれ残っていて、とくに淡海國玉神社(遠江國総社)の入口にわかりやすく掲載されている。

 

 

 小国神社はその新しい妻と再婚した故事にならって恋愛成就の信仰がある。

 話を戻すと、富士山周辺の民にとっては英雄スクナビコナの妻は本来コノハナサクヤなのであり、コノハナサクヤの夫は本来スクナビコナなのである。

 この神社はそういったある種色々なところを敵に回しかねない意味が隠されているのかも知れない。

 いずれにしても富士山麓の人々は朝廷から禁じられていた古い時代の信仰をこっそり続けていたということがわかる。

 そしてこの神社の境内から反対側を見ると箱根の山稜つまり「箱根権現」が見える。

 修験道は修行に使う山を神仏として祀るが、富士修験があるように箱根修験も存在して箱根権現に祈りを捧げて修行する。

 箱根権現の正体は九頭竜というヒュドラで、インド神話の絵でシヴァが背もたれにしていたりする。